公開レッスンを聴講するコツ(その3. 自分が先生だとしたら?)

公開レッスンを聴講しながら学べる事はまだまだあります。

 

今回は、「自分が先生で、この奏者からアドバイスを求められている」と思いながら、公開レッスンを聴講してみましょう。

 

前回のテーマの「音楽での模写・臨書」を応用してみましょう。

私もレッスンで皆さんにアドバイスするときにこの方法を使っています。

 

自分より上手な人の演奏を「模写・臨書」するときは、ほとんどすべての場合、「自分の中にはまだ無い、良いもの」を新しく学び取る気持ちで向かいます。

 

しかし、明らかに自分のほうが技術的に、音楽的に上手に演奏できるときは、すこし事情が違います。

 

相手が演奏している時の「息づかい」や「気持ち」、「演奏している体の使い方」などをそのまま自分の気持ちや体にコピーし、そこから感じられる「違和感」から、その違和感の原因がどこにあるのかを考えます。そしてそれを取り除く方法を考えます。

 

では実際のレッスンでの様子を例にあげてみましょう。

 

例1. 

目の前の生徒さんは、一所懸命弾いているのですがしんどい割には良い音が出てきません。私は彼女に「できない原因がどこにあるのか」「どうすれば良くなるのか」をアドバイスする立場です。

 

こんな時私がどうするかというと、

 

1. 私は彼女が弾いている姿形をそのまま私の体に映し取ってみます。

 

2. 彼女の弾き方は、右手の肘が上がって右指を強く弓に押しつけています。

 

3. そこで私も、彼女の弾き方を自分の体にそっくり「模写・臨書」してみます。

つまり、彼女と同じ角度で肘を上げ、同じ弓の持ち方でチェロを弾いてみます。(実際に楽器は持たず、頭の中でイメージするだけです。)

 

4. すると私の肘と肩と指にキュ~ッとチカラが入ってきます。さらに、親指も突っ張ってきます。

 

5. これらの無駄なチカラが上手に弾けない原因だとわかるので、その原因を取り除く方法を彼女と一緒に探します。

 

 

例2.

1. D線とG線の「移弦」を習い始めたばかりの生徒さんが移弦のしかたを練習しています。

 

2. その音を聴くと、D線もG線も同じ深さで弦に着地してしまっている音がしています。

 

3. そして、生徒さんの右手を見ると、生徒さんの右指の感触が私の右指に感じられます。

 

4. そこで「それぞれの弦に特有の深さで弦を掴んで発音させる方法」をもう一度彼女と確認していきます。

 

 

例3. 

もう何十年も前のことになりますが、ドイツに留学する前に私は自分の演奏のデモテープを留学先の先生にお送りし、聴いていただきました。当時はまだ映像を送るというすべはなく、送れるのは音源だけでした。

 

先生からの返信の手紙にこんな言葉がありました。

「私はあなたが実際に弾いているところをまだ見てはいませんが、あなたの音を注意深く聴くと、

あなたがどんなふうに弓や楽器を扱って、

どんな様子で弾いているか、

私にはありありと見えます」 

 

そして、その後ドイツに渡り、初めて実際に先生の前で演奏を聴いていただいたとき、

「ほらね、私の想像していたとおりです」

とおっしゃいました。

 

そして授業の中で、「チェロを教えるときは、目の前の生徒の心と体をまるごと感じるんだよ」と

おっしゃっていました。

 

皆さんもぜひ「模写・臨書」をチェロの練習に生かしてみてください。

 

 

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