レッスンでのアドバイスは「お薬」だと思ってください

レッスンを受けている時にこんなこと思ったことはありませんか。

 

「えっ、先生、この間のレッスンのときはあんなこと言ってたのに今日は違うこと言ってる。いったい私、どうしたらいいの」

 

または、同じ問題点について、いろんな方から違うアドバイスをもらい、戸惑うこともあると思います。時によっては正反対の。

 

いろいろ違うことを言われると混乱しますよね。 

そんな時はこう考えてみてください。

「今日は前回とは違うお薬をもらったわ」と。

 

 

人間の体の本来の姿が「健康な状態」であるように、

人間の本性は善であるという「性善説」のように、

「自然=自ずから然る」の意味のように、

 

誰でももともと、初めてチェロを持ったその日から、その人らしく素敵にチェロで音楽を奏でられるんです。

 

でもその秘めたチカラの上に、まるで竹の子の皮のように、いろんな困った原因が覆い被さっているので、初めは全然弾けません。

 

その、弾けない原因を、一つずつ、一つずつ取り去っていくと、少しずつ中から「チェロで素敵な音楽を奏でられる私」が「自然と」現れてくるようになります。

 

そしてこの、「できるようになっていく」というイメージは、「一つずつ壁を乗り越えて前進していく」や「ステップを一つずつ積み上げていく」というイメージというより、「一歩進むごとに楽になっていく」「少しずつ解放されていく」というイメージのほうが近いと思います。 

 

 

私のレッスンでは、できない原因を生徒さんと一緒に探します。

原因が分かればあとはそれを取り除く方法を一緒に考えます。

 

これはちょうど、病気になってお医者さんに行って、診察してもらって、治療方針を相談し、お薬を出してもらったり、運動療法などの処方箋を出してもらうのと同じです。

 

ですから、チェロのレッスンでもらってくるアドバイスは、あなたが再び元気になるための=あなたが本来持っている「チェロで音楽を素敵に奏でるチカラ」を引き出すための、「まだ今は素敵には弾けない原因」を取り除くための「お薬」だと思ってみてはいかがでしょう。 

 

<もらったアドバイスで困ったら:>

 

1. 同じ指導者のもとでのレッスンなのに、アドバイスが前回と違うのは、指導者が生徒のその時点での状態に合わせて、処方する「お薬」を変えているのだと思ってください。

 

私もレッスンで、前回出したアドバイスには効果がないようだと思ったら、今回はまた違った言い方を試してみます。他の生徒さんに「よく効いた」言葉を、別の生徒さんに試してみるときもあります。(でも残念ながら、本当の「お薬」と一緒で、その人にも効くとは限りませんが。。)これが、私のレッスンで「先生の言うことがときどき違う」原因です。

  

2. 一つの同じ問題点に関して複数の人から違ったアドバイスをもらってしまったときは、同じ症状に対して医師によって出す薬が違ったり、診立てが違ったりするのと同じと思ってください。医療現場での「セカンドオピニオン」と同じと思っていただければ、異なる意見もうまく取り入れられるのではないでしょうか。

 

また、一見違って見える複数のアドバイスの後ろに、ある「共通のゴール」が見えてきませんか。表現のしかたが違ったり、アプローチのしかたが違ったりしているだけで、結局どれも同じことを言ってることがあります。

 

3.レッスンに行ってせっかくもらったアドバイス。  でも、何のことやらさっぱり理解できないときは、わからないまま、でも忘れないように頭の片隅に置いておいておくと、いつの日か「あっ、あの時先生に言われたことはこれだったのか!!」と気づく時がきっと来ます。こちらがまだそのアドバイスをもらっても活かせない状態だと、せっかくのアドバイスも効き目がない、というのも本当の「お薬」と似ていますね。 

 

  

 先日ある方から、チェロの演奏方法についてのセカンドオピニオンを求められるという経験をしました。また先週は、ドイツ人の友達と日本の武道・道場・禅に関して何度も意見を交わす機会がありました。この禅の考え方は、留学当時、日本人の私がドイツ人のチェロの恩師から教えていただいたもので、今もずっと私を助けてくれています。帰国してからもう何十年も経った今になって、また武道や禅についていろいろ考えることができ、先週はとても感慨深い週になりました。

 

というわけで、もともと今回は前回のお話(斜め懸垂)の続きをしようと思っていたのですが、急遽この記事に差し替えさせていただきました。

 

 

 

・もし「禅」について少しでもご興味がおありになるようでしたら、禅の本として

「弓と禅」[オイゲン・ヘリゲル/著 魚住孝至/訳 KADOKAWA/角川学芸出版 (2015/12/25)] 

をお薦めします。

 

これは、私がドイツに留学していたときに恩師から読むようにいわれた本  "Zen in der Kunst des Bogenschiessens / Der Zen-Weg."  の日本語新訳です。世界中で愛読され続けている名著です。精神論はちょっと難しそうに思われるかもしれませんが、そう分厚い本ではありませんし、私たちは日本文化の中で育ってきたので意外と理解しやすいです。ドイツ人が書いた禅の本を日本人が読むって、文化の逆輸入みたいですね。

 

 

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